2018年1月5日金曜日

ヨーロッパのインターナショナルスクールについて(2)

ヨーロッパのインターナショナルスクールすべてがこのインターナショナルスクールのように怪しげな経営だと言い切るつもりはない。しかし、英語圏以外で英語で教育を行っている新興のインターナショナルスクールの多くは、このインターナショナルスクールと同じように教育に経験の乏しいマネージメント会社がアジアやロシアなど新興国の富裕層の師弟をターゲットに行っている営利事業である。

2012年末、日本に帰国した私は二人の留学希望の小中学生の両親と面談した。一人はピアノを演奏する11歳の小学生で家族とともに海外で音楽に専念することを希望しており、もうひとりはチェロを演奏する13歳の中学生で、すでにイギリスのボーディングスクールに留学中だが転校を希望していた。ウィーンのボーディングスクールで英語で勉強を続けながらウィーン・フィルの首席奏者からチェロのレッスンを受けることにとても期待を抱いていたこともある。

新しいインターナショナルスクールとまだ契約もしていなかった私は必ずしもこの学校だけを推薦するのではなく、特に小学生にはもしウィーンで音楽をやりながら勉強したいのならウィーン少年合唱団の小学校、中等学校も候補に入れてはどうかと薦めた。新しいインターナショナルスクールの授業料は300万円近く、ボーディングもいれると年間700万円近い金額となる。

それに対してウィーン少年合唱団の学費は小学校で275ユーロ、上級学校で250ユーロほどだ(昼食費込み、年に10回)。同じ私立でも新しいインターナショナルスクールとの差はなんと20倍にもなる。ウィーン少年合唱団の入学試験は主に歌の試験だけで、ソルフェージュなんて日本の音楽系の小中学校と比べれば恐ろしく簡単だし、基本的に面接だけで学科の試験はない。

ウィーン少年合唱団は他のブログにも書いたように国立公園のアウガルテンの中にあり、その環境は申し分ない。合唱団は変声期を迎えると容赦なくクビになってしまうのだけど、いまは女の子も入れる上級学校がある。しかし、学科の成績は一般の小学校、中等学校にくらべてあまり芳しくない。したがって、将来音楽の道に進まないで一般の進学をする場合は入れる大学などは限られてしまう。
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2013年、ウィーンのインターナショナルスクールではフォルカー・Hが常勤の”Head of Music"となり、Hの子どもたちもプライマリースクールで校長のNの子どもたちと一緒に通い始めた。しかし、年明け早々に行われた投資家たちの理事会では学校運営会社に苦情が殺到していた。この学校の初年度の生徒数の目標は60人、それに対して実際には全学年合わせて20人ほどの生徒しか集まっていなかったのである。理事会の苦情を受けて学校運営会社は2週間ほどのうちに二人目の校長であるホルヘ・Nを解任してしまった。はじめのうち引きつった顔で学校に来ていたホルヘ・Nは1ヶ月ほどすると子どもたちを連れて姿を消してしまった。

後任の校長が誰になるかわからないまま、私は再び契約を待たされることになった。クリスティン・Wは「新しい校長が誰になるかわからないと契約できない」と言ってきたし、契約書の内容や条件も一転二転してわけのわからないものだった。

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